7月17日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でがんの経済毒性と戦う動きについて取り上げていたのでご紹介します。
治療費などの負担が患者に悪影響を与えることを経済毒性と呼びます。
お金を理由に治療を諦める人もいて、今、関心が高まっているんです。
この経済毒性を減らそうという動きが広がっています。
浜松医療センター(静岡県浜松市)。
この日、病院を訪れたのは1年前に肺がんが再発した鈴木さん(仮名)。
パートで毎月10万円ほどの収入を得ていました。
高額療養費制度を使っても治療費(自己負担)は毎月4万円を超えます。
そのため治療費が心配で払えない、「治療しない」と先生に伝えました。
がんの進行と同時に金銭面の不安も鈴木さんを苦しめました。
病気としてのがんに加えて治療費の負担や収入を失うことで患者やその家族に悪影響を与えること経済毒性と呼びます。
調査では、がん患者の約9割が経済的な不安を訴えています。
患者サポート協会 ファイナンシャルプランナー(FP)の黒田ちはる代表理事はがん患者に特化したアドバイスを行っています。
この日の相談者は、夫ががんと診断された女性。
住宅ローンの支払いが出来なくなり、今年、家を売却しました。
治療以外の支出が削れるものを洗い出します。
実は黒田さんは元看護士、患者の経済毒性を目の当たりにし、FPに転身しました。
黒田さんは次のようにおっしゃっています。
「半年後、1年後、このまま治療が続けられるというのが分かったり半年後のお子さんの教育費が払えるという見通しが立つと本当に顔が明るくなる。」
経済毒性を減らすために欠かせないのは治療と仕事の両立です。
浜松医療センターでは、その支援に力を入れています。
呼吸器内科の小澤雄一医師は次のようにおっしゃっています。
「がんて言われた時に、皆さん、ちょっとびっくりして仕事を辞めちゃう方がいらっしゃるので、とにかく(診断された)最初に仕事を辞めないことがすごぐ大事なもんですから。」
がん患者の鈴木さん、治療も仕事も諦めかけていましたが、両立支援を受けることに。
患者はまず勤務先とともに業務内容を主治医に提出します。
それをもとに主治医は患者に仕事と治療の両立について指導。
更に勤務先にも主治医は意見書を渡します。
鈴木さんの主治医意見書には症状や治療の予定の他、休憩などの配慮があれば、働き易いなどと書かれています。
「元々100あったものが90・80・70になるかもしれないけれども、その状態でちゃんと戦力になるということは会社にも分かってもらって。」
両立支援では、医師は使う薬にも目を配ります。
肺がんだけでも約40種類の抗がん剤があるといいます。
大澤医師は次のようにおっしゃっています。
「大変良いお薬はあるんですけども、中には副作用として手足のしびれなんてものもありますので、例えば繊細な職人さんとか細かな仕事をする方には事前にそういうこともお話して。」
仕事内容と副作用を踏まえて処方薬を選びます。
鈴木さんは今も生活を切り詰める日々が続いていると言いますが、次のようにおっしゃっています。
「辞めなくて良かったと思います。」
「仕事があるっていうのは気持ち的にすごく余裕、安心感ですよね。」
大澤医師は次のようにおっしゃっています。
「(両立支援に)医師が1人入ることで副作用とか治療の見透しまで含めた両立支援が出来るということがすごく大事かなと思っています。」
がんの経済毒性は患者だけでなく、企業も直面する課題です。
カルビーのある社員は次のようにおっしゃっています。
「工場の人は7.5時間、基本は製造ラインから離れることが出来ない。」
一方、電通のある社員は次のようにおっしゃっています。
「(企業内のがん)コミュニティは本来的には自発的なところがある。」
「ファーストバリアをどうクリアするか。」
この日、集まったのは金融や製造、報告など、様々な業種の約60人。
企業が出来る治療と仕事の両立支援について意見交換していました。
がん患者の就労支援に取り組むがん患者支援団体、CSRプロジェクトの櫻井なおみ代表理事、がんを理由に社員が辞めることは企業にとっての経済毒性だと言います。
「企業の立場から見たら、社員を失うのはものすごい損失で、就労支援をみんなで応援することで国としての経済損失だったり企業としての経済損失を防げるので。」
参加した企業、アフラック生命保険 健康推進室の大賀有希子室長は次のようにおっしゃっています。
「仕事を辞めてしまうことは何としても止めなければいけないと。」
同じく会に参加したサッポロビール(東京・渋谷区)では時短などの制度を整備し、働く意欲のある社員の治療と仕事を両立し易くします。
更に社内にがん患者たちのコミュニティを作りました。
乳がんの経験のある社員は次のようにおっしゃっています。
「(これまで)病気のことを伏せていたので、自分の経験を話すことで自分の病気を受け入れられた。」
また、頸部食道がんの経験のある、人事総務部の村本高史さんは次のようにおっしゃっています。
「お互いに気を遣い、心を遣い、働き易い環境を作れるか、それは制度より風土があってこそだと考えています。」
経済毒性に対して、様々な支援策がありましたが、聖路加国際病院など、病院自体がファイナンシャルプランナーと提携して、患者への支援を充実させる動きも広がりつつあるということです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組の内容を以下にまとめてみました。
(拡大する経済毒性を減らす動き)
・治療費などの負担が患者に悪影響を与えることを経済毒性と呼ぶ
-お金を理由に治療を諦める人もいて、今、関心が高まっている
・この経済毒性を減らそうという動きが広がっている
・経済毒性を減らすために欠かせないのは治療と仕事の両立である
(浜松医療センターの事例)
・1年前に肺がんが再発した鈴木さん(仮名)は、パートで毎月10万円ほどの収入を得ているが、高額療養費制度を使っても治療費(自己負担)は毎月4万円を超える
・そのため治療費が心配で払えないので「治療しない」と先生に伝えた
・がんの進行と同時に金銭面の不安も鈴木さんを苦しめた
・調査では、がん患者の約9割が経済的な不安を訴えている
・患者サポート協会 ファイナンシャルプランナー(FP)の黒田ちはる代表理事はがん患者に特化したアドバイスを行っている
-この日の相談者は、夫ががんと診断された女性で、住宅ローンの支払いが出来なくなり、今年、家を売却し、治療以外の支出が削れるものを洗い出す
-黒田さんは、半年後、1年後、このまま治療が続けられることが分かったり半年後のお子さんの教育費が払えるという見通しが立つと本当に顔が明るくなると言う
・浜松医療センターでは、その支援に力を入れている
・呼吸器内科の小澤医師は、がんて言われた時に、皆さん、ちょっとびっくりして仕事を辞めてしまう方がいらっしゃるので、とにかく診断された最初に仕事を辞めないことがすごぐ大事だと言う
・がん患者の鈴木さん、治療も仕事も諦めかけていたが、両立支援を受けることにした
-患者はまず勤務先とともに業務内容を主治医に提出する
-それをもとに主治医は患者に仕事と治療の両立について指導する
-更に勤務先にも主治医は意見書を渡す
-鈴木さんの主治医意見書には、症状や治療の予定の他、休憩などの配慮があれば、働き易いなどと書かれている
・両立支援では、医師は使う薬にも目を配る
-肺がんだけでも約40種類の抗がん剤があるという
-仕事内容と副作用を踏まえて処方薬を選ぶ
・鈴木さんは今も生活を切り詰める日々が続いていると言うが、「辞めなくて良かったと思います。仕事があるっていうのは気持ち的にすごく余裕、安心感ですよね。」と言う
・小澤医師は、両立支援に医師が1人入ることで副作用とか治療の見透しまで含めた両立支援が出来るということがすごく大事だと指摘する
(がんの経済毒性は企業も直面する課題)
・この日、集まったのは金融や製造、報告など、様々な業種の約60人、企業が出来る治療と仕事の両立支援について意見交換していた
・がん患者の就労支援に取り組むがん患者支援団体、CSRプロジェクトの櫻井なおみ代表理事、がんを理由に社員が辞めることは企業にとっての経済毒性だと言う
-企業の立場から見たら、社員を失うのはものすごい損失で、就労支援をみんなで応援することで国としての経済損失だったり企業としての経済損失を防げる
・会に参加したサッポロビールでは時短などの制度を整備し、働く意欲のある社員の治療と仕事を両立し易くしている
・更に社内にがん患者たちのコミュニティを作っている
・また、頸部食道がんの経験のある、人事総務部の村本高史さんは、お互いに気を遣い、心を遣い、働き易い環境を作れるか、それは制度より風土があってこそだと考えている
・経済毒性に対して、様々な支援策があるが、聖路加国際病院など、病院自体がファイナンシャルプランナーと提携して、患者への支援を充実させる動きも広がりつつある
そもそも、調査では、がん患者の約9割が経済的な不安を訴えているという状況において、国民健康保険制度はあるものの、特にがん患者が蓄えの少ない年金暮らしや非正規労働者の場合、十分な治療が受けられません。
また、正規労働者でもがんと医者に判定された場合、非常に精神的に打撃を受け、また仕事にも差し障りが出てくるので辞めざるを得ない可能性があります。
そうした場合、がん患者は、まずこの先、経済的に暮らしていけるか、行く末が心配になります。
また、経済的な負担を減らすため、出来る範囲での仕事の継続を望みます。
一方、企業としても、人手不足が言われる中、従業員には出来るだけ続けて働いて欲しいのです。
そうした中、番組でも取り上げていたように、患者にとって、経済面では聖路加国際病院など、病院自体がファイナンシャルプランナーと提携して、患者への支援を充実させたり、また仕事の継続については、社内でがん患者がどのような環境であれば、仕事を続けることが出来るかといったことに相談出来る相談窓口を設置し、きちんと対応出来る仕組みが求められます。
なお、番組ではがん患者に焦点を当てて取り上げていましたが、経済毒性はがん患者に限らず、脳梗塞など、他の病気に共通します。
ですから、何らかの病気を患ってしまい、経済的に困ってしまった従業員が安心して仕事を続けられるような仕組みが全ての企業などに求められるのです。